AIコンサルティングとAIエージェント開発を手がけるAI Librarium株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役CEO:西川 智章)は、2026年11月1日から「AI Business Producer Program」の提供を始める。対象は、企業の中でAI活用の企画や推進を担う人材だ。研修(基礎編・実践編)、「Skills」、実案件での伴走OJTを一体で提供する。Skillsとは、同社のAIコンサルタントが実案件で使う判断観点、検討手順、アウトプットの作り方をまとめたものだ。

日本の大手企業のうち生成AIを活用・推進している企業は87%、期待を大きく上回る効果を創出している企業は9%
同社が背景として挙げるのは、PwC Japanグループの「生成AIに関する実態調査2026 春 6カ国比較」(2026年6月10日発表)だ。この調査では、日本の大手企業のうち生成AIを活用・推進している企業が87%に達した。一方で、期待を大きく上回る効果を創出している企業はわずか9%にとどまり、調査対象6カ国の中で最も低い水準だった。
AI Librariumは、AIを日常業務で使えることと、自社の業務課題からAI活用を企画して実装まで進められることの間には大きな隔たりがあると捉えている。実際のAI案件では、業務知識だけでなく、データの理解、IT・セキュリティ要件の整理、開発チームやベンダーとの連携など、複数の領域にまたがる判断が求められる。これらをすべて一人で担う必要はない。ただし、案件のオーナーが論点を理解し、適切な専門家を巻き込みながら意思決定できる状態が不可欠だという。
同社はこの役割を担う人材を「AI Business Producer」と定義している。自社の業務・事業を理解し、社内外の専門家と連携しながら、AI活用の企画・構想から検証、実装までを一気通貫で推進する人材のことだ。本番システムの詳細設計や開発をすべて自ら担うことは前提としていない。事業・業務側の案件オーナーとして、まず業務課題を捉えてAI活用を構想する。次に、必要なデータ・システム・セキュリティ等の成立条件を整理する。そのうえで実際の利用シーンで検証し、社内外の専門家と連携して実装へつなげる。
コンサルタントの暗黙知を「Skill」として持ち帰る
プログラムの最大の特徴は、受講者に配布されるSkillsを研修後も実務で使い続けられる点にある。Skillとは、専門家が現場で培ってきたアプローチ、メソッド、判断基準などの暗黙知を、AIエージェントが実行可能なモジュールとして構造化したものだ。各Skillは次の3要素で定義されており、作成者以外が使っても同じ水準の成果物に至るよう設計されている。
- Input:必要な情報・データ、前提条件
- Process:フレームワークと実行手順
- Output:期待される成果物
基礎編では「業務プロセス構造化Skill」と「AIユースケース選定Skill」を使う。実践編では、ToBe業務設計からPoC計画策定までの各工程に対応するSkillを活用する。受講者はSkillの出力をそのまま採用するのではなく、自社の状況に照らして評価・修正しながら使う。これにより、専門家の知見を活かしながら自ら案件を進める方法を身につける。プログラムの土台には、2つの知見がある。1つは、西川氏が総合商社のDX支援で1,000名以上のAIビジネスプロデューサー育成に携わった経験。もう1つは、AI案件に携わってきたコンサルタントの知見だ。
基礎編・実践編の2研修と、オプションの伴走OJT
プログラムは「基礎編」「実践編」の2つの研修と、研修後に実案件を支援する「伴走OJTプログラム」(オプション)で構成される。
基礎編は、AI活用の基礎を学び、自社で取り組むテーマを見つけるコースだ。
- 形式:オンライン、座学中心(一部ハンズオンあり)
- 時間:2時間×2回
- 対象者:AIユースケースが未決定の企業(受講者も参加可能)
- 内容:生成AI・AIエージェントの基礎、Skillを活用したAI時代の仕事の進め方、自社業務の構造化と課題整理、AIユースケース候補の抽出・選定
- 到達イメージ:自社で検討すべきAIユースケースが整理され、次に取り組むテーマが明確になっている状態
実践編は、決定済みのユースケースで構想から検証までを実践するコースだ。
- 形式:ハンズオン中心
- 時間:2時間×6回
- 対象者:取り組むAIユースケースが決定している方
- 内容:ToBe業務設計、人とAIの役割設計、AI実現方式・基盤の検討、必要データの特定・整理、PoC・簡易検証計画の策定、AI駆動プロトタイピング、ユーザー検証を踏まえた業務要件の具体化
- 到達イメージ:AI活用構想を検証し、本番実装に向けた業務要件・残課題・進め方を整理できている状態
実践編では、受講者が各自のユースケースを題材に、講師のフォローを受けながら検討を進める。プロトタイピングの目的は開発者の育成ではない。「作る→使う→フィードバックを得る→改善する」のサイクルを短期間で回し、実際の利用シーンを通じて業務要件を具体化するために行う。
伴走OJTプログラムは、研修後に希望する企業へ個別に提供される。案件の主体は受講企業にあり、AI LibrariumがPoCや実装を代行するものではない。同社のAIコンサルタントがアドバイザーとして伴走し、受講者が実案件を進めながら、必要なタイミングで専門家の知見を取り込める状態をつくる。支援内容は次の通り。
- 定期的な案件相談・論点整理
- 成果物、PoC計画、検証結果のレビュー
- 技術・データ・セキュリティ等の専門論点への助言
- 社内開発チーム・外部ベンダーへの引継ぎ内容のレビュー
- 社内説明・意思決定に向けた整理
外部ベンダーに発注する場合は、研修成果物をもとにRFPのたたき台を作成する「RFP Generation Skill」なども、案件に応じて追加で提供する。
想定する企業と今後の展開
同社が想定する導入企業は3タイプだ。1つ目は、AI研修は実施したものの実務での活用につながっていない企業。基礎編で受講者自身がSkillを使って自社業務のAIユースケースを具体化し、取り組むテーマを持ち帰れる状態をつくる。2つ目は、AI活用を進めたいが外部任せになり、社内で案件を前に進められない企業。実践編で、業務設計からデータ整理、PoC計画までを自社の担当者が主体となって検討する。外部ベンダーに依頼する場合も、自社で要件や判断基準を整理したうえで、主導権を持って進められる状態を目指す。3つ目は、PoCまでは進めたものの、本番化の判断や定着につながらない企業。伴走OJT体制を通じて、実案件のPoC計画や検証結果のレビュー、社内の意思決定に向けた整理を支援する。
西川氏は「AIを使えることと、AI案件を動かせることは別の能力」と述べる。そのうえで、自社の業務を理解する人が案件のオーナーとなり、データ、IT・セキュリティ、開発、ベンダーといった専門家を巻き込みながら企画から実装まで前に進められる状態をつくることが必要だと強調する。一方で同氏は、こうした力は研修だけで短期間に身につくものではないとも指摘する。そこで同社は、AIコンサルタントが実案件で使う判断観点や進め方そのものをSkillsとして提供し、その使いこなし方を研修で学べるようにしたという。
今後は、研修カリキュラムとSkillsを継続的に拡充する。企業ごとのAI活用状況や業務領域に応じた専門Skills、伴走OJTの提供領域も広げていく方針だ。実案件で蓄積した知見を育成プログラムとSkillsへ継続的に反映し、「学ぶ → 使う → 振り返る → 再利用する」というサイクルを企業内に定着させる。これにより、人材育成とナレッジマネジメントを一体化した仕組みを目指す。
AI Librariumは2025年9月に設立されたAIコンサルティング企業で、「AIで、日本の『働く』をアップデートする」をビジョンに掲げる。大手SIerやコンサルティング企業を中心に、AI戦略の策定から業務変革、AIエージェントの実装、AIガバナンス設計までを一貫して支援している。あわせて、AI案件で培われた実践知や専門家の暗黙知を、AIが実行可能な「Skill」として体系化し、組織の中で蓄積・改善・継承できる仕組みづくりを推進している。